2015. 04. 19  
8

「艦隊出撃準備、急いで!」

工作艦明石の声がドック内に響き渡った。
鎮守府付きの整備員たちや妖精たちが無駄のない動きで出撃する艦娘たちの艤装の準備を進めていく。

第一陣で出撃する打撃艦隊の総旗艦を任された長門はその光景を不思議な気持で眺めていた。

すでに関東全域の海岸線から市民の避難が進められていた。
鎮守府においては艦娘に関する大部分は妖精と呼ばれる不可思議の生物たちの活動によって支えられているが、それですべてを賄うことはできないため、艦隊運営を補佐するために多くの人間が勤務していた。

政府からの避難指示が出た時点で、鎮守府に勤務する人員にも帰宅・避難指示が出されていた。
妖精たちはどこからともなく湧き出て、どこへとなく消えていき、作業指示以外については全くこちらの指示を聴かないことや、そもそも死ぬことがあるのすらわかっていない存在であるため半ば放置されているが、鎮守府に勤務する人員は軍属にも満たない非戦闘員という立場にあり、彼らの人的被害を避けたい思惑からの指示であった。
だが、出撃準備に追われる喧騒を見ると、ほとんどの者が残っている印象だ。

「長門の嬢ちゃん、艤装を付けるぞ。ぼやっとしてんな!」

白髪の整備員に声をかけられ、長門は我に返った。
見上げればクレーンで吊られた46サンチ3連装砲装備の艤装が下されようとしていた。

「ん、ああ頼む」

モーター音とともに艤装が下され、長門に体に装着される。
長門は装着された艤装を砲塔を回転させたり、砲の仰角を上下させたりして、動作に異常がないことを確認した。

「異常はないな」

「おう。じゃあ頼んだぜ。深海棲艦を食い止めてくれよ」

「ひとつ聞いてもいいか?」

立ち去ろうとする整備員を長門が呼び止める。

「どうした? 何か違和感でもあるか?」

「いや、艤装の方は問題ない。完璧な仕上がりには感謝している。それではなくて、整備員の避難はどうなっているのだ?」

「若いヤツらは帰らせた。残ってる連中は年寄りばかりさ」

確かに言われてみればドックで動いている整備員は初老の域の年齢の男たちばかりだ。
艦娘の艤装は技術的な面で見れば第二次大戦時の産物で、技術発展のゆえに失われた過去の技術が多く使われている。

物も言わず作業をする妖精たちは苦にもしていないようだが、人間の整備員たちにしてみれば触れたことのない技術に等しかった。過去のデータなどからマニュアルを作成するなどの対応も行われているが、修復や整備の必要性は人員の育成を待ってくれるようなものではなく、また意思の疎通がままならない妖精たちに任せっきりになるのも好ましくない。

これを解消するべく鎮守府は整備員の育成を待たないことを方針として定め、かつてその技術に触れたことのある整備員たちを集めること決めた。
対象となったのは、すでに第一線を退いた高齢者たちだったが、多くの老整備員たちが鎮守府に集い、整備作業と若い整備員の育成に当たっていた。

「避難しないのか?」

「俺たちが避難したら、お前さんらの艤装の面倒誰が見んだよ。妖精たちも居るには居るが、鎮守府に残った全戦闘艦の出撃を、あのちっこい奴らだけじゃあ手が足りねえだろ」

実際、妖精たちがどれくらいいるのかわかっていないものの、100隻を越える現在の鎮守府では、艤装の整備には人間の整備員たちの存在は不可欠だ。
しかしそれは彼らが鎮守府と運命を共にする選択をしたに他ならない。

「そうか…すまない。感謝する」

「……昔の、ガキの頃の話だが」

「?」

「前の戦争が終わったときだ。俺は横須賀生まれだがド田舎に疎開してて空襲には運良く合わなかったが、戦争が終わって横須賀に帰る途中で東京の焼野原を見た。そんで横須賀に着いた時に見たのは、アメリカの船に囲まれた戦艦長門が1隻だけポツンと浮かんでた。俺はそこで初めて戦争に負けたって意味を実感したもんさ」

「……」

「今じゃあ大和こそが戦艦だなんだと言われちゃいるが、俺たちの戦艦と言えば長門と陸奥だ。だからお前さんを頼りにしてるぜ」

「……失礼だが、あなたはいくつなんだ?」

その問いに老整備士は皺だらけの顔に笑みを浮かべる。

「今年で80さ。あと20年は婆さんと生きるつもりだ」

長門は目を閉じて一寸考えたのち、再び目を見開いて老整備員を見た。
その表情のなかの眼差しはどこまでもまっすぐで、覚悟を決めた一人の戦士の姿があった。

「約束しよう。あなたとあなたの家族、そしてこの国の未来は、この戦艦長門が守る」
2015. 03. 31  
本日を持って
横鎮提督のとーこさんじゅうきうさいになりました。
あーもー…

作品タイトルは
「横鎮提督のとーこさんじゅうはちさい」のまま行きます。
2015. 03. 29  
行ってきました。
アメリカのスケールの大きさに負けた…。
20150329.jpg

詳細は後日ワレアオバにてレポートします。
疲れました…
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