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2009. 10. 06  
 打ち倒した見張りの五人をロープで縛りつけたのちに、三人は遺跡へと足を踏み入れた。
 先頭に剣を手にしたフォレフ、真ん中に魔法の明かりを杖に灯したティーフ、殿はシィルビアが務める。
 遺跡は入り口より、外の廃墟同様に石造りで二人が並べる程度の通路が地下へ向かってゆるい下り坂となって続いていた。
 15メートルほどの間隔で右へ左へと折れ曲がった後に、9メートル四方の小さな部屋へとたどり着く。ここには見張り役の男が二人いたが、先だってシィルビアが外の男たちと同様に眠り矢を放って眠らせた。
「なるほど…。ここから遺跡に入るのか」
 かつてはここで行き止まりとなっていたために、長い年月の間発見を免れたのだろう。石壁の一角には最近崩されたと思しき穴を開けられていた。
 警戒しつつ穴の中を覗き込むと、石とは別の材質で作られた通路が左右に続いていた。これまでの石造りのものに比べると、無機質な雰囲気が漂っている。
 通路の壁にはところどころ踝あたりに埋め込まれた小さな照明が灯されていて薄明るい。
「何だこの壁?」
 フォレフは通路に入ると、ノックするような仕草で壁を叩く。石壁とは明らかに異なるコンコンと軽い音が返ってくる。
「この明かりも蝋燭とかじゃないのね」
 壁に埋め込まれた照明には、壁と平行になるようにそれぞれ半透明のガラス板のようなもので仕切られていて中が見えないようになっているが、蝋燭が入るには明らかに小さく、ましてや白い明かりなど蝋燭の明かりで出来るものではない。
 明かりのせいもあって、床に薄く降り積もった埃に複数の足跡が行き来しているのが見て取れる。三人はその足跡を追うように奥へと進む。
「ジュピロス文明の遺跡なんかに似てるな、ここは」とティーフ。
 ミッドガルドの、それこそ聖戦のころに存在していた古代文明は、根本的に魔術によって築かれた文明である。しかしその同時期に突如出現したジュピロス文明は、異質な技術と文化を持っていた。言うなれば、機械文明だ。
 古代文明期には魔法文明が発達する傍らで、ドワーフと呼ばれる妖精族に由来する手先の器用な亜人たちがおり、彼らはその器用さから道具としての機械を作り出していた。
 だがジュピロス文明の機械はそれらを凌駕したものであり、生活の全てに渡り機械が使用されていた。彼らは知能を持つ機械さえも操り、過酷な条件下の労働なども独自判断で駆動する人型機械で行っていた。また彼らは天に星を打ち上げて、その星からミッドガルド各地の情報を得ていたともいう。
 残念なことに、その優れた機械技術の大半は聖戦で失われてしまった。シュバルツバルト共和国にある飛行船や蒸気機関車などは当時の技術の残滓だが、新たにそれを製造することは不可能であり、それらを保守・運用する技術のみが現存しているのみだ。
 また魔法文明で機械を作成していたドワーフたちも一千年という時の流れの中で、種としてはミッドガルド大陸から消え失せてしまい、彼らの残した機械も大半が製造方法は失われ、使用方法だけが伝えられている。
「でも何でこんな場所に機械文明が残ってるんだ?」
「戦争のためだろうなあ」
「戦争?」
「このサンダルマン要塞は防衛戦争のためにつくられたんだ」
「モロクの古代王国が、蛮族の侵入をを防ぐためとかそういうやつだっけ?」
「それが通説だが、オレが昔見た史料には別の話が書いてあった。ここは昔、『死』に対しての最前線基地だったそうだ」
「どういうことだ?」
「聖戦の時代、グラストヘイムで巨人族と人間とが争っている他方で、この地方もある勢力の攻撃にさらされていた。
 それが世界樹イグドラシルを通じてニブルヘルムから這い出た『死』の勢力。
 こいつらのせいで洞窟を閉ざして篭城したコモド以外の西方諸地域は全てが死に絶えた世界に成り果てた。
 古代モロク王国はこのサンダルマン要塞を建造し、『死』の勢力と文字通り生存圏をかけて戦ったんだそうだ」
「それで、結局どうなったの?」
「グラストヘイム陥落の代償として巨人族が勢力を落としたのと同じころに、どういう理由か『死』の勢力も勢いを落としたらしい。案外、根っこが同じだったのかもな。
 それを機にこの要塞からの反攻作戦でイグドラシルまで押し返し、やがて向こう側からの門を閉じるコトに成功したと書かれてた。由来不明の蛮族云々よりは信憑性があると思ってたが……」
「じゃあここもその頃の?」
「ジュピロス文明は戦いのための技術も発展してたそうだからな。おそらく」
「何でその話が蛮族なんてものにすりかわったんだ?」
「さあ? ひとつ考え付くとしたら、モロク人の死後観を守るためとかかな」
「ああ、モロクの人って死後に復活するって考えてるんだよね」
 古代モロク人の死後観は現代のミッドガルドのものとは異なり独特な発展を遂げており、死によって肉体から離れた魂は再び肉体に戻ってくると信じられていた。
 そのために彼らは王から庶民に至るまで死体をミイラとして保存し、復活に備えていたのだ。
「実際は悪霊じみたものになってるけどな」
 古代モロク人の信仰通りにミイラに魂は宿った。しかし思惑と異なり狂気に犯された魂としてだが。ピラミッドに埋葬された古代のモロク人たちは妄執に憑かれた悪霊として、墓所へと踏み込んでくる冒険者たちに襲い掛かる存在となってしまっている。
「とはいえ、歪められた記録が流布し、蛮族として記憶されているわけだ」
「話し戻すが、当のモロク人ですら忘れたこの場所を何でここの連中は知ってるんだ?」
「わからん」
 そうティーフが言った瞬間。
 薄暗い照明のみだった通路に白い明かりが天井にパッと灯り、あたりは昼間のような明るさに包まれた。続いて耳障りな警報音が響き渡る。
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Comment
ここまで一気読みしました(`・ω・´)ノ

途中で終わると聞いていたので全部出てから読むつもりではあったのですが、暇なのもあり(笑)読んじゃいました(ノω`)
けっこうおもしろいですね~

あまりに途中すぎる終わり方だけはしませんように(-人-)
企画自体は面白くて完結させて欲しかったのですけどね。
サンダルマン遺跡はコモドアップデート以降放置されているところなので、
実は遺跡が眠ってたという発想は面白いですよね。
一応、8回目で終わりの予定です。
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