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2009. 10. 04  
 砂漠の都市モロクの南西に位置するその廃墟は、かつてサンダルマン要塞と呼ばれていた。
 その規模は都市にも匹敵するほどに広大で、北部には城郭、南部にはファロス灯台を備えた港や市街が建設された。
 城郭部分は廃棄されて久しく、現在棲むのはコボルドやゴブリンらの亜人たちだ。
 南部は現在でもモロクの衛星都市的な役割を得て、海からの玄関口として機能してはいるものの、広大な用地を有しているにもかかわらず人口が少ないため、閑散とした雰囲気が否めない。
 ここはすでに過去の栄光の残滓なのだ。
 このサンダルマン要塞は、かつて西部諸地域が不安定であったころに蛮族の侵攻に備え、古代モロク王国によって建設された。歴史書にはそのように記載されている。
 しかし少し頭の回るものならば、不可解な点に気がつくだろう。それはつまり『蛮族』と称される存在は何者なのかという点に。
 サンダルマン要塞より西の地域には遠く洞窟都市のコモド、そして世界樹に抱かれた土人たちの集落ウンバラが存在するが、どちらの人口はモロクのそれに比べてささやかな規模でしかない。
 それが例えモロク王国の時代のころであってもさした差などないだろう。いや、むしろ王国時代のモロクにはあの巨大なピラミッドを建設する力が存在していたのである。例え西部諸地域の彼らが敵対勢力としてモロクに侵攻したとしても、果たして脅威となるのかどうか。ましてや、コモドやウンバラにはモロクと敵対したという記録はない。
 では何故に都市規模の要塞が建設されるに至ったのだろうか。
 史料らしい史料が存在せぬため、言い伝え程度に残るサンダルマン要塞についての口伝が唯一の手がかりでしかなく、多くの歴史学者が首を傾げながらも、それを容認せざるを得ないのが現在であった。
 一部の学者は古代モロク王国が存在した時代が一千年前の聖戦と重なることから、聖戦時に使用されたことを主張しているが、確固たる証拠がないため、推測の域を得ない。
 さらにこの廃墟の不幸な点は、冒険者たちに見向きもされないことだ。
 冒険者たちが魔物たちの巣食う遺跡に入り込み、残された宝物など持ち帰ってくることで、その遺跡の由来などが判明するケースは少なくない。
 しかしサンダルマン要塞には冒険者たちが目指すような遺跡は確認されておらず、西部諸地域をへと向かう者たちが通り過ぎるぐらいの存在でしかない。この地が『廃墟』とは呼ばれるが、『遺跡』とは呼ばれないのはそのためだ。

     * * *    * * *    * * *

 サンダルマン要塞の中央部付近に彼らが目指す目標があった。
 すでに日は西の大地に没してはいるものの、その僅かな残光が空を藍色に見せていた。目標に近づくには絶好の状況だ。三人の冒険者は薄闇に紛れ慎重に目標へと近づく。
 これまでに本来の住人であるコボルドたちを見かけることはなかった。遠巻きに警戒をしている様子すらない。おそらくは徹底的に排除されたのだろう。
 物陰に潜む三人の視線の先には、ぽっかりと漆黒の闇を見せる『遺跡』の入り口がある。その遺跡が彼らの受けた依頼の目標だった。
 遺跡の周囲には警護役と思しき鎧姿の男たちが五名ほどいた。盛大に焚かれた焚き火の周りで談笑している声が三人の耳にも聞こえる。
「連中。余裕だな…」
「でも手練だ」
「何で分かるの?」
 断言するティーフにシィルビアが首を傾げた。
「あ…えーと…。雰囲気とか?」
「何で疑問形なのよ…」
「連中、盗賊ギルドと何かあったんだな?」
 怪しげな素振りを見せるティーフにフォレフが問いかける。
 三人の雇い主は盗賊ギルドだった。本来ならギルドとの仲介に立つべき盗賊は、このパーティにはいない。ティーフが何らかのコネをもち、盗賊ギルドとパイプを持っているのである。今回の依頼はこの魔術師を経由してもたらされたものだった。
 フォレフにしてもシィルビアにしても、そのことを知ってはいるものの、ティーフが盗賊ギルドとどういう関係にあるのかは詳しくは知らない。本人曰く「知らない方が身の為」だそうなので、詮索するのが得策でないことも理解している。
「あー、うん。まあそういうことだな」
 言葉を濁すようなティーフの態度に、二人が顔を見合わせる。しばし目線で会話した後にフォレフが口を開いた。
「濁すなら、オレとシィルビアはここで降りるぞ」
「いや、なにね…。盗賊ギルドも自力解決するつもりで、大人数でここを強襲したらしいんだが……」
「が?」とシィルビア。
「返り討ちにされちゃったんだってさ」
 ティーフの明るい口調に、二人は深くため息をついた。
「それでオレにどうにかしてくれと、お願いが回ってきたわけ」
「それを受けたってことなのね。私たちに相談も無しに」
 少し非難するような刺々しさが感じられた。
「まあ彼らとの今後のより良き信頼関係のために、一仕事ってね。それにほら。面子掛かってるだけに報酬もでかいし」
 悪びれた様子も無いことに、二人は再びため息をつく。
「まあここまできたら乗りかかった船だしな。今回は貸しとく」
「…フォレフがそう言うなら、私も付き合うよ」
「いやあ、オレはホントにいい仲間持ったねえ」
 二人は三度ため息をついた。
「しかし盗賊ギルドの連中はどうしてここのこと知ったんだ?」
「最初の出所は噂話だったらしい。夜にここを通り抜けようとした奴が、ああやって焚き火している連中を見かけたとか。それがあまりにも頻繁に話題に上るからギルドの連中が興味もって調査したら、あの通り『遺跡』があったと」
 盗賊ギルドは未発掘の遺跡の存在を無視できないどころか大いに惹かれたのである。
 かつて栄華を誇った古代文明が聖戦を経て消滅してより千年。その遺産を擁する『遺跡』は発見し尽くされ、手付かずの遺跡はもはや発見されることはないと考えられていた。
 各地の『遺跡』は広大であり、そのすべてが探索しつくされたわけではないとはいえ、長い年月を掛けた幾多の冒険者たちの活動が、数多の遺産を発見してきた。その価値はピンキリではあるものの、発見されたという事実は、これから未来に発見するという可能性を奪い去っているのは否めない。
 既に冒険者の手垢に塗れたモノに比べ、未発掘の『遺跡』が新たな可能性を秘めているのは言わずもがなだ。ここが冒険者たちの言の葉に乗るより前に独占したいというのが、盗賊ギルドの希望するところなのだろう。
「でもさ。あわよく依頼をこなして、報酬は口封じだぜ~なんてのは嫌だよ?」
 よく有りそうな話だ。
「大丈夫さ」
「何で?」
「オレに手を出すと痛い目に見ることはアッチもわかってるから。それに向こうも人手はあっても、人材が不足してるからな。友好的関係にある人材を手放すほど馬鹿な真似はするまい」
「どーだか…」
 シィルビアは自信満々に答えるティーフに肩を竦める。
「とりあえず、連中を無力化しないと」
 フォレフの提案に二人は改めて遺跡の入り口に屯する武装した男たちの様子を窺う。
 あたりはすっかりと暗くなり、焚き火の照らす巨大な影が遺跡の壁に映り、ゆらゆらと揺れる。
 その影の様子から見て取れるのは、彼らは寛いだ様子ではあるが、決して油断しているわけではないということだ。談笑する声は聞こえるが、その声に酒酔ったような声は混ざっていない。
「まるで軍隊みたいだな…」
 ボソリとつぶやくフォレフの言葉にティーフが頷いた。
「確かに。盗賊ギルドの襲撃部隊を撃退するような連中だから、只者じゃあないとは思っていたが、軍隊っていうの考えもありだな」
「じゃあ、モロク軍? それともプロンテラ軍?」
 モロク軍はモロクの自治政府が組織する軍隊で、モロク地方の治安維持と魔物の討伐などをメインに活動している。プロンテラ軍はルーンミッドガルド王国の有する正規軍で、王国規模での治安維持と魔物の討伐、さらには国家防衛を任としている。
 モロク軍はともかくとして、プロンテラ軍の上位組織プロンテラ騎士団には非正規活動の部隊が存在する。まさに今のような状況においてはうってつけではある。また非正規活動ではなく、正規活動として行動している可能性もないわけではない。
 しかしティーフはそれを否定する。
「いや、違うと思う」
 盗賊ギルドはどちらの組織にも内通者を潜入させており、例え秘密裏の活動であっても何らかの情報が流れるはずだ。ギルドと同質集団の非正規活動部隊の情報は得難いが、それでも全く察知できないと言うのは信じ難い。
 それならばあの武装した連中は何者なのか。
「考えても埒が無い。それに依頼されたのは連中の正体を探ることじゃないんだろ?」
 頭を悩ませるティーフにフォレフがため息をつく。ティーフは我に返ると苦笑した。
「確かに。用があるのは中の方だ」
「今外に居るので全員ってことは無いよね?」
「わからん。だけど言えるのは……」
「一人も逃がすな。でしょ?」
 シィルビアの言葉に男二人が頷いた。
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