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2009. 10. 03  
「あ、起きた」
 まだ少女の域を脱しない女の声。それも聞き覚えのある声だ。
 頭の中でその声の主を懸命に検索する。誰だったか・・・
「寝ぼけてるのか?」
 今度は男の声、こちらも聞き覚えがある。が、誰なのか思い出せない。
 ああ。見たほうが早いか。
 視界をめぐらせると、栗毛の狩人の少女と、緑髪の聖堂騎士の青年がこちらを覗き込むように見ていた。
 かつては家として使用されていた石作りの一室のようだ。一箇所だけ開けられた明かり取りの窓から差し込む光のほかに光源はなく、昼間にもかかわらず室内は薄暗い。
 乾いた風がわずかながらに砂が丘を削り、鳴り響くような音以外はまったくの静寂。
「寝すぎて、あたまがポリンになった?」
 と少女。弾んだ声に連動するように槍の穂先のようにとがった妖精の耳がパタパタと動く。
「阿呆」
「うわ、アホって言われた」
 容赦ない言葉に顔しかめる少女に、聖堂騎士が苦笑する。
「ちょっと言い過ぎだ。どっちもね」
「うー・・・」
「あー、すまん。ちょっと混乱してたんだ」
 身体を起こして腰を上げる。ローブについた砂埃を手で叩き落としながら、傍らにおいていた握りに骸骨の意匠が凝らされた杖を拾う。手櫛で髪をかけあげながら、額のバンダナを指で押し上げて直した。
「混乱って、どうかしたのか?」
「いや、なんつか、夢を見ていた気がするんだよ」
 この言葉に狩人の少女が反応した。
「どんなの?」
「・・・忘れた」
 目に見えてがっくりと肩を落とす様はそれなりに見ものではあるが、こうまでされるといったい何を期待していたんだかちょっと気になる。
「ところでフォレフ。オレが寝てる間になんかあったか?」
「いや、何かあったらとっくに起こしてるさ」
 柔らかな微笑を浮かべながら聖堂騎士の青年は首を横に振った。
 聖堂騎士の青年の名はフォレフという。重厚な鎧をまとっているにもかかわらず、職のイメージに反して体つきはほっそりとしている。ただしか細いのとは異なり、むしろ余分なものを絞り落して引き締まった印象に近い。
 彼の傍らにいる狩人の少女はシィルビアという。後ろで編み上げられた長い栗色の髪の脇から一対のとがった耳が突き出るように伸びている。全身から躍動感というか、元気が溢れ出しているような少女だ。一言付け足すなら、無駄に溢れ出ている・・・のだが。
 そして、起き上がってきた青年の名はティーフという。魔術師である。黒い髪を白いバンダナでまとめあげているものの、前髪の一部が右目を覆い隠すかのように垂れている。何度か撫で付けるように前髪を直すが結局諦めた。懐から小さな眼鏡を取り出して、鼻の頭に乗せる。
「何時間寝てたんだオレ?」
「何時間ってほどでもないよ。30分くらいだったかな」
「ちょっと寝てるなって感じだった。疲れてるだろうし、何かあった時は起こすつもりでいたからそのままにしてたんだけど」
「ん。そうか、ありがとな」
 砂漠を渡ってくるのに思った以上に体力を消費していたのかもしれない。
 まだ眠気で頭がすっきりしないにもかかわらず、数百年も寝ていたような気もする。
「じきに日が暮れる。そろそろ頃合じゃないか?」
「もうそんな時間か。場所の方は問題ないか?」
「偵察に出しておいたヴィントが見つけてきてくれたみたい。方向と距離は把握したわ」
 シィルビアの手懐けている鷹、ヴィントは優秀な偵察兵である。今は周囲警戒のために高高度で待機させている。
「とりあえず情報通りってことね」
「盗賊ギルド直通の情報だぜ? 間違ったら構成員全員に転職を勧めるね」
「そうだね。完全に日が落ちる前に近くまで移動したい。ティーフとシィルの準備は?」
「私はいつでも」
「オレの方も問題ない」
 フォレフは頷くと壁に立てかけていた愛用の両手剣を手にとって腰に佩く。それに伴って感情が抜け落ちていくかのように、その表情が締まったものへと変化した。
「行こう」
 緑髪の聖堂騎士は踵を返すと、スタスタと速い足取りで部屋を後にした。狩人の少女は愛用の弓を担いでその後を追う。
「さあて、お仕事お仕事っと」
 魔術師ティーフは面倒くさそうに杖の頭で肩を叩きながら深くため息をつき、二人の出て行った出口へとゆっくりと足を進めた。
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