2015. 04. 07  
-横鎮提督のとーこさんじゅうはちさい-
「70年目の誓い」


鎮守府の埠頭では大和、矢矧、浜風、雪風、初霜、霞の6名が艦娘が単横陣に並んで海を眺めていた。

大和「矢矧、この方向で良くって?」

矢矧「ええ。何度も測りなおしましたから、間違いありません」

浜風「艦隊に磯風がいないのが残念ですね」

初霜「朝霜もです」

大和「巡りあわせですから。彼女たちもこの空の何処かで祈ってくれていると思いますよ」

雪風「雪風もそう思います」

雪風の声に皆がクスリと笑う。

霞「どうでもいいけど、もうすぐ時間よ」

大和「そうね。ありがとう霞」

霞「ふん」

ふてくされるように大和から視線を外す霞だが、この場に来てくれたことに大和は嬉しく思う。

矢矧「大和、14時23分です」

矢矧に促されて、大和は姿勢を正す。
そして凛とした声を放った。

大和「第2艦隊第1遊撃部隊。総員、黙祷!」

全員が目を閉じて頭を垂れる。
その様子を少し離れた場所から提督と吹雪が見ていた。

吹雪(秘書艦)「あの方向は?」

とーこ(提督)「坊ノ岬、だろうね。70年前の今日、今まさにこの時間に大和が轟沈したからね」

吹雪「それで皆んなで集まったんですね」

とーこ「あの洋上特攻で失われた将兵の冥福を祈りたいってな」

吹雪「わかります。私も艦娘ですから」

とーこ「70年も前の話だ。あの戦争で大勢の人が死んだのは悲劇だが、お前たちは今を生きてる。だから艦の記憶に囚われてほしくはない」

吹雪「……」

会話の間に黙祷は終わったらしい。
埠頭に集まっていた艦娘たちは大和に一礼しながら、それぞれ現在の部隊へと散っていく。

最後まで矢矧が付き添っていたが、大和に何かを言われて少し考えた後に鎮守府へと戻っていった。
大和はただひとり、埠頭に残って海を眺める。
吹雪を帰した提督はそんな彼女へと近づいて声をかけた。

とーこ「いよう、お疲れさん」

大和「お疲れ様です、提督」

こちらに見せる表情は意外にも笑顔だった。

とーこ「悪いね、磯風と朝霜を連れてこれなくて」

大和は少し表情を曇らせて左右に首を振った。

大和「いずれ運命が合えば、彼女たちと話せる機会もあるでしょうから」

とーこ「それが遠くない未来であることを祈るよ」

大和「提督の運だとかなり遠いかもしれませんね」

とーこ「このやろー…」

大和がクスリと笑う。
我らが提督のドロップ運はかなり悪いです。

大和「そういえば提督。今日が何の日か覚えていますか?」

とーこ「ああ。ちょうど1年前。我が艦隊にお前が着任した日だ」

大和「……覚えていてくれたんですね」

とーこ「そりゃあね」

当時小躍りして大和の着任を迎えていたなどは言わないが。

大和「提督。70年目で2年目の今日という日に、私なりの決意を誓いを立てたいのです。聞いていただけますか?」

戦後70年。艦隊着任より2年。
真剣な眼差しを向ける大和の様子に提督は了承する。

とーこ「ああ。聞き遂げよう」

大和「私。戦艦大和は艦娘として再び受けた生を今度こそ。この国とこの国に住まうすべての人々の平穏のために、命尽きるその時まで守りぬくことを誓います」

とーこ「その誓いは聞き遂げた。それが為されることを私はお前に求めよう。だけどね…」

大和「?」

とーこ「死んで咲く花はない。だから生きろ。生きて自分が守りぬいたこの国を、この国の人々を、お前自身が天寿を全うする最後まで見守りなさい。私はそのために一生懸命にお前を守るから」

提督の言葉に大和は一瞬、虚を衝かれたような表情を見せたが、やがて満開の桜のような笑みを浮かべた。

大和「はい。今後とも宜しくお願い致します」

あの戦いに意味はあったのかと問われる。
散っていった将兵や人々の命に意味はあったのかと。

無意味であったはずはない。

人種差別が平然と行われたいたあの時代に
極東の島国が見せた意地が、その流れに楔を打ち込んだのだと思う。

証左もなく、証拠も何もない。
ただ今の時代がそうであることが、
賞賛されることのない、彼らの為した意味なのだ。

1945年4月7日14時23分
第2艦隊第1遊撃部隊は沖縄を目指すも、坊ノ岬沖にて米軍艦載機の波状攻撃を受け戦艦大和轟沈。
(「軍艦大和戦闘詳報」に拠る)

総員、黙祷。
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