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2015. 03. 11  
7-2

吹雪は広げられた海図の上に4つの駒を置く。

「敵艦隊を包み込むように殲滅します」

「輪形陣のように見えますね。いえ、むしろ方形陣かしら」

翔鶴が口の前に手を当てて考えるような仕草をしながらつぶやく。

角を頂点とする方形に置かれた4つの駒は、海戦ならば輪形陣、陸戦ならば方形陣と呼ばれる形に見える。

吹雪は直接それには答えずに言葉を続ける。

「戦闘に参加可能な艦艇を打撃艦隊と、本土防衛艦隊に振り分けます」

「迎撃ではないのか?」と長門。

「実質的にはそうですが、『打撃』と言った方がこちらから行ってる気になるじゃないですか」

長門はその回答に苦笑する。
だが吹雪の考えていることももっともなことだ。
敵から攻められているという心理的な負の側面を、こちらから攻めるのだと置き換えることで戦意を高揚させるつもりなのだろう。

かつての戦いでは『全滅』を『玉砕』、『撤退』を『転進』などとぼやかしたものだが、吹雪の取った手段は大風呂敷を広げようとする行為に近いのだと思う。

「やりたくないことでも、やらねばならぬことをやるときは、派手に積極的に。事の主導権はそれを取ろうとする意志が取るもんだよ」

この場に不在の提督はそういう考えの持ち主だった。
深海棲艦の大艦隊の侵攻を受けつつある今、受け身で事に当たるのではなく、むしろこちらから当てに行くのだという姿勢を、吹雪は提督から受け継いでいるようだった。

「打撃艦隊は大島沖で深海棲艦に当たり、攻撃を仕掛けます。本土防衛艦隊はそれぞれ下田沖、東京湾口、南房総沖に展開し、打撃艦隊の攻撃後の状況で動きを変えます」

「状況ってなんだよ?」と天龍。

「第1案は深海棲艦艦隊が打撃艦隊との決戦を行う場合、本土防衛艦隊は大島沖に急行し、打撃艦隊と連携して艦隊戦に臨みます」

吹雪の案に大和が首を傾げる。

「でも吹雪さん。前衛艦隊の様子からすると、敵艦隊は分離して本土を目指すことが考えられるのではないでしょうか?」

「ええ。打撃艦隊には空母機動艦隊と火力の高い艦艇による水上艦隊を当てて、敵艦隊の足止めを試みますが、これまでの動きからすると打撃艦隊を避けて進攻を続けることも考えられます」

「むしろその可能性の方が高いでしょうね」

重巡を代表して出席している古鷹がうなづく。

「第2案は深海棲艦艦隊が打撃艦隊との決戦を避けて本土を目指す場合、下田沖、東京湾口、南房総沖で本土防衛艦隊が迎え撃ちます」

「3艦隊に分けてしまうと火力の低下を招きませんか?」

大和からは懸念の声が上がる。

「深海棲艦が決戦を避けた場合にどこに向かうのかの確証がありません。なので3方向の頭を押さえる必要はあると思うんです。もし仮にいずれかの方向にのみ進攻を続ける場合は、他の2方向の艦隊はそちらに急行します」

「もっともらしく言ってるけどよ。つまるとこ配置だけはして、後は出たとこ勝負ってことだろ?」

「そうですね」

天龍のざっくばらんな感想に吹雪は苦笑せざるを得ない。

こちらが様々な想定で試行錯誤をするように、相手も目的達成のために思考する。だからこそ基本となる目的や指針を固めたうえで細部については自由を与え、臨機応変に行動で対応をするのだ。
予定が決まっている戦闘というものは当然のごとくありえない。戦場の状況は常に不規則に変化し、勝利するためにはそれに合わせた選択を求められる。

準備せずに不規則なこと当たる出たとこ勝負とは根本的に異なるが、「配置だけはして」という言葉を混ぜていることに事の本質は天龍も理解していると吹雪は判断した。

「他にこの作戦に意見がある方は挙手をお願いします」

進行役の大淀がそう声をかけながら会議室にいる艦娘たちを見まわすが、誰も手を挙げるものは無かった。

「では作戦は、本案の通りに実施することを総意とします」

「艦隊決戦、ですね」

大和はやや興奮を様子を隠しきれず、その声をわずかに上ずっている。

かつての日本海軍が抱いていた艦隊決戦主義の行きついた先が大和型戦艦であった。
にもかかわらず当時の戦場の主力は航空機へと移り、大和が艦隊決戦に用いられることは無いままに、栄光の日本海軍の落日を表すかのような特攻作戦でその終焉を迎えた。

この世界に新たな生を受けて艦娘となった大和だが、膨大な資源消費から温存策が図られ、かつてほどではないが実戦への参加経験は多くは無い。

提督帯同までして行われたMI作戦には、は高速戦艦の金剛、榛名が選抜され、他に陽動のAL作戦に選抜された扶桑、山城を除けば、7隻の戦艦が鎮守府に留め置かれた。

だが、深海棲艦との戦闘では今のところ航空機の優位性はあまり見られず、火力重視の戦艦の優位性も依然と存在する。
結果として7隻の戦艦が残っていたことは、深海棲艦の大艦隊の迫る今状況では一条の光明だともいえる。

待ちに待った艦隊決戦。
それは大和のみならず、残された艦娘たちに否応なしの興奮を与えるものだった。

「戦力の振り分けはどうするつもりだ」

「はい。素案ですけど考えてあります」

吹雪はプリントアウトした文書を長門に手渡す。
渡された文書に視線を落とした長門はふと背後に気配を感じ振り向くと、後ろから覗き込もうとしていた大和と視線が合った。
大和はバツが悪そうな表情で慌てて離れる姿に長門は苦笑した。

「す、すみません」

「気持ちはわかるさ。皆も気になるところだろうしな」

長門は持っていた文書を海図の上に広げた。

・打撃艦隊(水上艦隊)
長門(総旗艦)・大和・陸奥・高雄・愛宕・吹雪
・打撃艦隊(水上艦隊支援)
那珂(旗艦)・磯波・敷波・綾波・舞風・雪風
・打撃艦隊(機動艦隊)
翔鶴(旗艦)・瑞鶴・千歳・千代田・比叡・霧島
・打撃艦隊(機動艦隊支援)
陽炎(旗艦)・曙・潮・皐月・長月・霰

・本土防衛艦隊(東京湾口)
妙高(総旗艦)・那智・足柄・羽黒・雲龍・飛鷹
・本土防衛艦隊(東京湾口支援1)
天龍(旗艦)・龍田・暁・雷・電・鳳翔
・本土防衛艦隊(東京湾口支援2)
夕張(旗艦)・白露・村雨・五月雨・涼風・霞
・本土防衛艦隊(東京湾口支援3)
伊168(旗艦)・伊58・伊19・伊8・伊401・まるゆ

・本土防衛艦隊(南房総沖)
伊勢(総旗艦)・日向・最上・三隈・鈴谷・熊野
・本土防衛艦隊(南房総沖1)
阿賀野(旗艦)・能代・朝潮・大潮・荒潮・満潮
・本土防衛艦隊(南房総沖2)
矢矧(旗艦)・酒匂・浜風・浦風・初風・天津風

・本土防衛艦隊(下田沖)
古鷹(総旗艦)・加古・利根・筑摩・祥鳳・瑞鳳
・本土防衛艦隊(下田沖1)
長良(旗艦)・鬼怒・夕雲・巻雲・長波・秋雲
・本土防衛艦隊(下田沖2)
名取(旗艦)・由良・Z1・Z3・漣・朧

「大淀はどうするの?」

陸奥がリストに名前のない大淀に訪ねる。

「私と明石は鎮守府に残って、各艦隊との連絡役と修理体制の調整を行います。現在資材運搬を行っている睦月さんたちは、作業終了後に鎮守府の直衛として配置されるそうです」

・鎮守府
大淀(総旗艦)・明石
・鎮守府直衛
睦月(旗艦)・如月・弥生・文月・菊月・三日月・望月

「私が打撃艦隊の総旗艦となっているが…打撃艦隊には吹雪も参加するのか?」

「戦闘は長門さんの指揮に従います。私は艦娘ですので、直接戦場を見て各艦隊に指示を出すつもりです。そのために打撃艦隊に加わります」

「最前線に出るということは、防衛艦隊に加わる以上に危険があることを認識した上でだな?」

長門が吹雪と正面から視線を交えて改めて問う。
吹雪はその視線を受け止めながら力強くうなづいた。

「はい。それが最善だと判断します」

「相分かった。戦闘において私はお前を一駆逐艦娘として扱おう」

「お願いします」

吹雪はその場に揃っている艦娘全員を眺めるように向き直る。

「本作戦の成否によってこの国の防衛と私たち艦娘の存在意義が問われることになります。各艦は全身全霊を傾けて任務遂行に当たられるよう、お願いします」

吹雪の言葉に艦娘たちは一斉の敬礼を持って答えた。
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