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2014. 11. 21  
(幕間2)

艦娘支援母船、龍神丸船内の大広間では熱戦が繰り広げられていた。

畳40畳ほどの大広間は艦娘たちが移動中にリラックスできるように船内に用意されたものだ。
非常時には深海棲艦の襲撃などで船を失った人たちを収容できるようにと、このようなスペースは他にも幾つかあり、龍神丸には合計で200名ほどが収容できるようになっている。

しかしMI作戦に特化して行動する今は使われない部屋は閉鎖され、艦娘たちはこの大広間に集まって思い思いに過ごしている。

無論、本土襲撃に逸る気持ちがないわけではないが、鎮守府周辺海域に到達するにはあと1日以上の時間が必要だ。
鎮守府周辺に到達した時に即応できるように、今は英気を養えと提督に命じられ、割り当てられた部屋に1人でいるよりはと大広間で過ごしていた。

命じた提督もブリッジから離れてこの大広間に来ていた。
龍神丸は鎮守府に勤務するスタッフによって運用がされており、船長の指示で航行しているため、提督は艦娘の出撃時を除けばブリッジにいてもすることはない。

むしろウロチョロしないでくださいと言われて、ブリッジを出ざるをえないような状態だった。

そこでやってきた大広間で加賀が他の艦娘に将棋を教えながら指しているのを見かけると、加賀に勝負を挑んだのだ。

「これで詰みです」

加賀はそう言いながら銀の駒を盤上に子気味の良い音とともに指す。

「かーっ! また負けた!」

提督が後方に大の字になるように倒れる。

「これで10敗目ですね」

その様子をずっと見守っていた赤城が納得行かないといった表情で唸る。

「ハーイ提督、お茶が入りましたネー」

起き上がってきた提督に金剛がティーカップを差し出す。
提督はそれを受け取ると一口すする。

「なんかおかしいか?」

「いえ。仮にも提督は提督なわけじゃないですか」

「仮でも何でもなく提督なわけだが」

「これまで提督の指揮で様々海域を突破してきた赤城さんは、私との勝負に負け続ける提督が不思議でしょうがないのですよ」

駒を片付けながら加賀が赤城の気持ちを代弁した。

「そうそう。わざと負けてるんですか?」

「まさか。加賀のほうが強いから負けてんの」

「嘘ついてませんよね?」

「私が嘘ついてるようにみえるか?」

「見えます」

赤城の即答にがっくりを首を落とす。
そんな様子を見て、加賀が助け舟を出す。

「赤城さん、別におかしいことはないと私は思います」

「どうしてです?」

「将棋は戦術レベルの戦いです。ですが提督の得意とするのは戦略レベルの戦いですから」

「戦略が得意なのに、戦術は苦手なんですか?」

「そもそも実際の戦闘に私は口出してないでしょ」

艦娘たちの実際の戦闘は旗艦の指示と本人の判断とで行われているのは確かだ。

「中にはそういうものに口を出すヒトもいるそうだけど、私が口を出さないのは素質的な面で赤城や加賀のほうが優ってるからだよ」

「提督ご自身は戦術に自信がないと?」

「やってやれないことはないが、深海棲艦との戦闘中は通信妨害なんかが起こることが多いのに、何故私が直々に指揮しないといかんの?」

「そうですけど…今回の作戦は提督も来てくれたじゃないですか」

「…いや、それはだな」

急に視線を泳がせるようにして押し黙る。

「Hey赤城! アナタ、ほんとに気づいてナイですカ?」

「…私が原因ですか?」

「赤城だけじゃナクて、一航戦シスターズと二航戦シスターズのためダヨ!」

赤城はしばし加賀と顔を見合わせた後に提督の方に再び向き直る。

「…本当ですか提督?」

「陸軍と連携する必要がある重要な作戦だったから私自身が出張ったのはあるけど…まあ、なんだ…お前たちが私が居ることで、少しは安心してくれるといいなあと思ってたのは本当だ」

背後では蒼龍と飛龍がハイタッチをして喜び合っている。
加賀は表情に出さないように務めながら、それでいて喜びを素直に表せる二航戦の二人を羨ましく思う。

人付き合いという点では、自分は極めて不器用だと加賀は自覚している。
察しのいい赤城が同僚艦であったことに随分助けられている。

だからこそ、表さなければならない感謝は大げさであってもしなければならないと思うのだ。

「赤城さん」

呼びかけに赤城が振り向く。
加賀の目をじっと見て赤城が微笑みながら頷いた。
二人は居ずまいを正し、提督の正面に並んだ。

「提督。一航戦赤城、提督のご配慮に改めて御礼申し上げます」
「同じく加賀、提督に感謝申し上げます」

そして深々と頭を下げる。
傍らで見ていた榛名が思わず感嘆の息を漏らす。
それくらい見ていて美しいと思う仕草だった。

その様子に最初は狼狽えた提督だったが、やがて自身も崩していた足を整えた。

「赤城、加賀。顔を上げて」

その言葉に二人がゆっくりと顔を上げる。

「赤城、加賀、そして蒼龍、飛龍。今回の作戦の成功はあくまでお前たちの力によるものだし、勝利はこの場にいる艦娘全員のものだ。私はお前たちが成し遂げてくれたことをとても嬉しく思う。だがまだ戦争が終わったわけじゃあない。だから、これからもお前たちの力を私に貸してくれ」

「「はい! この身の果てるまで」」

「蒼龍も力を尽くします!」
「飛龍も同じく!」

赤城と加賀の斜めすぐ後ろにはいつの間にか蒼龍と飛龍が足を揃えていた。

「お前らちゃっかりしてんのな…」

「いやあ、先輩たちだけお礼を言わせるのは忍びませんし…」

「あ、提督に感謝してるのは私たちもですからね。本当に」

提督は悪びれもなくそう言う二人に苦笑した。

「でもよぉ。提督がこっちに来たから本土がまずいんじゃねえの?」

「摩耶…」

頭の後ろで腕を組みながら摩耶が言う。
その横で鳥海がハラハラとしながら周囲の様子を見守っている。
提督はというとポリポリと頭を掻きながら口元には笑みを浮かべていた。

「事態は摩耶の言う通りだが、別に私が鎮守府にいてもあんまり変わらないかな」

「あ? 何でだよ」

「戦術面の指揮においては長門や大和がいるからな。私が居なくたってどうにかなる。それにな…」

「?」

怪訝そうな顔をする摩耶に提督の笑みがいっそう深くなる。

「海戦そのものはそれに至るまでに何をしたかによって決まるんだよね。戦術がお世辞にも上手くはない私がお前たちの指揮をしてこれまで勝ってこれたのも、要はそこに私の介在する余地があったからなんだよ」

「それは戦略とかそういう意味でですか?」

提督の雰囲気に飲まれ沈黙した摩耶に代わって鳥海が尋ねる。

「そんな大層なもんじゃないかな。私が出来るのは兵站の確保ぐらいなもんさ」

「兵站…」

榛名がボソリとつぶやく。
脳裏に浮かぶのは見上げ続けた青い空。
ただ見上げることしか出来なかった日々のこと。

「少なくともウチの鎮守府は資源不足で作戦を断念したことはないでしょ?」

「そうですね。少なくとも私たちは兵站で不自由したことはありません」

「継戦能力を保持するのが私の役割なのさ。あとはお前たちに任せるしか能がない」

「いえ、大切なことだと榛名は思います」

榛名の言葉に提督はニコリと微笑みを返す。

「でもよ。アタシたちは提督が指揮していたから戦ってこれたと思ってる」

「おや、摩耶がそう言ってくれるのは嬉しいね」

「っせーな、茶化すなよ。今の鎮守府にアンタはいないんだぜ?」

「そのための吹雪のつもりなんだよね」

「What's フブキが?」

「戦艦や空母を秘書艦にしてる提督は多いんだよ。艦隊の運営上、戦艦や空母を多用するし、他艦種の艦娘たちも戦艦や空母の指示は聞くだろ」

「私たち重巡や軽巡も指揮能力を有しますが、戦艦や空母の指示は上位命令だと自然に認識していますね」

鳥海が頷きながら答える。

「そう。だから駆逐艦である吹雪は鎮守府最古参だが、どこかのタイミングで誰かに変わるはずだったわけよ。例えば金剛とか、赤城とか」

「秘書艦っテ、メンドーそうデスネー」

「私は命じられればやりますよ」

「だけど私は着任時に前職からの移籍でゴタゴタしてたせいで、しばらく鎮守府に居なかったことがあってね。代理で鎮守府を回せる人材が必要だと思ってたワケ」

「それが吹雪ですか…」

少し納得の行かないという表情の加賀。

「うん。さっきも言ったとおり、私は戦術を得意としない。で、私の役目は戦闘指揮にはないと艦隊に艦娘が増えてきたあたりから考えていたのよ」

「それがナンデ、戦艦空母じゃナイ理由になるデスカ?」

「なまじ戦術に自信が有る奴はそれで勝負をしたがる。長門や大和は特にそう傾向があるな。誰だって自分の得意分野で活躍したいのが人情ってもんだし、あいつらが兵站に細かく指示するところとか想像できるか?」

「ワタシもあんまり資源とかの管理はしたくナイネー」

「だが、私の本質は兵站にある。それを理解できないヤツは私の代わりにはなれない」

加賀は提督の言葉に少し考えるような仕草を見せた

「例えばそれを理解できる戦艦や空母がいたら、秘書艦はその艦娘に代えていたのでしょうか?」

「IFの話は意味が無いな。遠征などで直接資源確保に出向く駆逐艦だからこそ、資源確保の重要性に気が付きやすいと私は判断したし、一番身近に居たから吹雪を選んだに過ぎない」

「…提督は吹雪に特別な感情を持っていないと?」

「何言ってんだお前」

「…失礼しました。失言でした」

目に見えるように加賀が萎縮する。

「ダメですよ提督。加賀をいじめちゃ」

「何で私が責められんだよ…ともかく、鎮守府には艦隊を初期から支えてきた吹雪、天龍、加古がいる。長い付き合いな分、あいつら等には私のやり方は叩きこんである。それが通用しないなら、私が鎮守府に居たとしても結果は変わりないと断言できる」

提督は力強く宣言した。
その場の艦娘が沈黙するのなかでおずおずと榛名が手を挙げる。

「提督。もしもの話ですが、鎮守府が陥落した場合、私たちはどうするんですか?」

「榛名」

声をかけられた榛名の身体がビクリと驚きに震える。

「…はい。すみません。変な話をして…」

「いや、みんなが口に出来ない悲観的な結果をよく考えたね。それは誰もが言いたがらないが、起こりえないとはいえないことでも有る」

「テイトクはその先のことも考えテいるンデスカ?」

「いかに優秀な兵器と人材が揃えられても、戦争に必ず勝てるわけじゃない。もし仮に鎮守府の戦力が全滅した場合は…」

その場の全員が息を呑む。
提督は艦娘たちを見回した後に口を開いた。

「お前たちごとアメリカに亡命する」
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