2014. 11. 16  


軽巡、雷巡、駆逐艦のみで構成された12隻の艦隊が10倍以上の敵に攻撃をするのだ。
正面から挑むのではなく、奇襲となるのは当然の帰結であろう。

古来より奇襲をするならば夜討ち朝駆けと相場が決まっている。
相手が人間であるならば、だが。

夜討ち朝駆けが有効なのは人という生き物が睡眠を取らざるを得ないからだ。
だが深海棲艦は眠らない。眠りを必要としない。

数々の夜戦、こちらからあちらの泊地への襲撃もあれば、あちらからこちらへの奇襲もある。
それらの戦闘詳報から推測できるのは、深海棲艦が眠っている様子が見られない。
前線に出てくるものだけがそうなのかもしれない。
仮に深海棲艦に鎮守府のような本拠地があるならば、眠ることがあるのかもしれないが。

球磨たち前衛艦隊の奇襲に対して、深海棲艦たちは混乱もなく反応してきた。
奴らの中には電探を装備しているものもいたので、接近する前衛艦隊は虎口に飛び込んできた哀れな獲物のようなものだった。

外周の深海棲艦が前衛艦隊に向かって砲撃を開始する。
射程の短い前衛艦隊はそれらを回避しながら深海棲艦へと接近を試みるが、接近すればするほどに砲撃は苛烈さを増していく。

「北上! 大井、木曾の3隻で分隊になるクマ!」

「雷巡ばっかしでどうすんのさ?」

「球磨たちが敵を引きつけるクマ」

「その隙に酸素魚雷で雷撃するのにゃ」

「…わかった。球磨ちゃんも多摩ちゃんも気をつけてよね」

「フッフッフッ。姉ちゃんは意外に優秀って言われてるクマ」

「いや、意外にじゃダメだろ…」

球磨は少し離れたところにいた阿武隈に声をかける。

「阿武隈、そっちの黒潮をこっちに貸して欲しいクマ」

「黒潮ちゃん、行ける?」

「まあ初春型の中に陽炎型のウチがおるより、あっちには不知火もおりますし、ええんとちゃいますか?」

「ワタシ的にはOKです! 黒潮ちゃん、頑張ってね」

「ほな初春姉さんたち、お世話になりました」

「ふむ。またあとでな」

黒潮がひとり、球磨の艦隊に合流した。

前衛艦隊(球磨本隊)
軽巡:球磨(旗艦)、多摩
駆逐艦:不知火、黒潮

前衛艦隊(北上分隊)
雷巡:北上、大井、木曾

前衛艦隊支援
軽巡:阿武隈(旗艦)
駆逐艦:初春、子日、若葉、初霜

「クマーズ艦隊は球磨に続けクマ!」

「クマーズってなんですか!? 私たちも入ってるんですか!?」

「阿武『隈』だから当然にゃ」

北上たちを残し、球磨たちと阿武隈たちが砲撃を加えながらその場から去っていく。
深海棲艦もそれに釣られるように砲撃が遠ざかっていった。

「どうするんだ北上?」

「めんどくさいこと押し付けるよね球磨ちゃんてば」

だるそうに深く息を吐きだす。
そして再び見上げる北上の視線の先には巨大な深海棲艦の影が遠くに見えた。
じっとその影をみつめる北上に大井が声をかける。

「北上さん?」

「ねえ、大井っち、木曾っち」

大井と木曾の方へと顔を向けた北上は、口元に奇妙な笑みを浮かべていた。

「何だ?」

「あれ狙おうか?」

指差す方向には巨大深海棲艦の影があった。

「マジかよ…」

「あれを一つでも減らしておけばさあ、吹雪たちも多分楽になるよね少しはさ」

「さすが北上さん! 素敵!」

目をキラキラとさせる大井と、覚悟を決めたように木曾は不敵な笑みを返す。

「一つでいいのか?」

「お、木曾っち言うねえ…じゃあ、雷巡三姉妹で世界を救いに行きましょうか~!」

「世界!? 北上さんと私の魚雷が世界を救うのね!」

「いや…おい、姉ちゃん! オレもいるから!」

「北上さ~ん! 行きましょおおおおおお!」

「木曾っちも大変だねえ」

「原因の一つが他人ごとのように言うなよ!」

北上分隊は巨大深海棲艦へと向かって進みだした。

前衛艦隊球磨本体と支援艦隊は追いすがる深海棲艦たちを、片方が引き寄せては、もう片方が横合いから敵に砲撃。砲撃に引き寄せられて敵がもう片方を追うと、片方が横合いを突くようにと動きで翻弄するように、徐々に深海棲艦の本隊から離れつつある。

追いすがってくる深海棲艦艦隊は戦艦を中心に重巡4隻、軽巡5隻、駆逐艦が8隻。
北上たちが離脱して9隻となった前衛艦隊のちょうど2倍の数が追撃に投入されていた。

その動きを見て、すぐさま球磨、多摩、阿武隈は零式水上偵察機を相次いで発艦させる。
偵察機は艦隊に追いすがる敵を大きく迂回するように飛び本土への進路を取る。

前衛艦隊の横合いから攻撃を仕掛け、すぐさま反転するヒットアンドアウェイのような行動に、深海棲艦艦隊の動きは前衛艦隊の追撃を一部の艦艇に任せて、本隊は進路を変えずに本土へと向かっている。

深海棲艦艦隊の目的は艦娘の撃滅ではなく、本土への攻撃を優先していることと理解できた。

零式水上偵察機の最大速度は時速367キロ。
2時間もあれば前衛艦隊が得た情報が横須賀の司令部に届けられる。

「球磨たちの第一目標は達成したクマ」

「あとは追撃艦隊を殲滅することですね」

球磨と並走していた不知火が手袋のたわみをなくすように裾を引く。
そのすぐ後ろを航行していた黒潮が不知火と並びながら感心するような声を上げる。

「やる気満々やなあ…」

「追撃部隊を行動不能にすれば、本土防衛の部隊が楽になります」

「そらそうやけど…」

「言い直しましょうか? 陽炎が楽になります」

「…陽炎かあ。ほならきばらんとなあ」

黒潮が片目でウィンクすると、不知火は口元に笑みを刻んだ。

「他所の艦は姉想いで羨ましいにゃ」

「球磨の妹だって姉想いクマ。北上も大井も木曾もきっとやってくれてるクマ」

「なるほどにゃ」

戦闘詳報:前衛艦隊及び支援艦隊は、0530敵深海棲艦艦隊へと攻撃を開始。
戦果:戦艦型大型深海棲艦、撃沈1。空母型大型深海棲艦、大破1を含む敵20余隻を撃破。
損害については記述なし。
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