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2014. 11. 09  


「前衛艦隊、出撃するクマ!」

球磨の号令のもとに前衛艦隊に任命された艦娘たちが続々と出港する。

前衛艦隊の任務は邀撃戦。
つまり艦隊決戦を前に敵艦隊の戦力を可能な限り削ぐことにある。

その任務の特殊性から、前衛艦隊の艦娘たちも特殊な編成をなされた。

前衛艦隊
軽巡:球磨(旗艦)、多摩
雷巡:北上、大井、木曾
駆逐:不知火

前衛艦隊支援
軽巡:阿武隈(旗艦)
駆逐:初春、子日、若葉、初霜、黒潮

鎮守府の岸壁には出撃待ちの艦娘たちが一斉に並び、前衛艦隊に向かって帽振れで見送る。

「なんかさ、決死隊みたいだよね、あたしたち」

だるそうな口調で北上が言う。

「決死隊みたいじゃなくて、決死隊なのニャ」

「え~…そこは否定してよ多摩ちゃん」

「決死隊だが、特攻隊じゃあない。可能な限り深海棲艦の戦力を削れってことだろ?」

「木曾の言うとおりクマ。特攻隊のように十死な作戦じゃないクマ。九死一生クマ」

「え~…」

球磨の言葉に北上がまた不満の声を漏らす。

「生き残りたいなら必死に戦うか、此処に残るか選べクマ」

「え?」

「妹とはいえ、戦う気がない艦を連れて行くつもりはないクマ」

いつになく真剣な球磨の態度に北上が怖気づいた。
助けを求めるように多摩に視線を送ると、多摩もまた北上を睨むような目つきだ。

北上にとって球磨や多摩は艦娘としては確かに姉だが、他の型艦に比べて姉らしくない存在だった。
球磨や多摩が軽巡、自分や大井、そして木曾が雷巡という同型艦でありながら別艦種なせいもあって、球磨型の姉妹は他の型艦に比べると姉妹意識が希薄だ。
書類上は妹艦に当たる大井も北上にとっては親友的な存在という意識にあった。

「北上さん…私は北上さんの味方だから」

大井が心配気な表情を見せつつもそう断言する。
何が執着のもととなっているのかはよくわからないが、大井は北上とともにいることを選ぶだろうことを、北上は知っている。
仮に雷巡の北上と大井が抜ければ、前衛艦隊は邀撃任務に大いに支障をきたすだろう。
選択権はむしろ北上の方にあるにも関わらず、球磨は嫌なら抜けろと強気に言ってくる。
その態度にやや不満を覚えないわけではない。

だが北上はふと思い出す。
今は遠い空の向こうにいる提督と、全艦娘を前にして「家を守りたい」と言った吹雪の姿を。
北上は力を溜めるように大きく息を吐きだす。

「何言ってんのさ球磨ちゃん。この北上様が深海棲艦に魚雷を打ち込まなくてどうすんの。前衛艦隊北上、40門の魚雷で敵の戦艦だって沈めちゃうよ」

球磨はしばし、北上の眼を眺めた後に北上に近づくと、背伸びをしてその頭に手を置く。

「期待してるクマ。それまでは姉ちゃんが守ってやるから安心するクマ」

「…ありがとね」

北上が顔を伏せながら小さくつぶやいた。

「あの~…どうかしました?」

様子を見かねた支援艦隊旗艦の阿武隈が近づいてくる。

「な~んでもないって。さあ、阿武隈も戻った戻った」

北上が押し返すように阿武隈の額に手をやる。

「ちょっ! 前髪に触らないでくださいよ…崩れちゃう」

「あはは。ごめんごめん」

「北上って絶対わかってやってるよな…」

「阿武隈はいじりやすいニャ」

前衛艦隊の任務は敵深海棲艦への邀撃が主任務であるが、その役割にはもう一つの意味があった。

古来より戦力の逐次投入は愚策とされている。
本来ならば、鎮守府の全艦艇をもって艦隊決戦に臨むのが本来なのかもしれない。

執ってはならぬ行動を何故行うのか。
それは本土防衛戦という事情が大きい。

艦隊決戦はひとつの場所に艦艇が集まり総力戦を行うことだ。
今なお語り継がれる日本海海戦がいい例だろう。

この場合、防衛対象に本土は含まれていない。
広義には含まれるのだろうが、目的はあくまで艦隊決戦に勝利することで国家を守るという考え方だ。

だが、本土防衛作戦において、敵の目的は艦隊決戦に必ずしも応じないと吹雪は主張する。
敵深海棲艦の目的は本土攻撃にあり、全艦艇による艦隊決戦を行えば、敵は本隊から離脱する艦もあるだろう。
わざわざ正面からの激突に付き合う必要は敵にはない。

一度離脱した艦は艦娘たちの妨害を受けずに本土へと攻撃することができる。
吹雪はそれを危惧していた。

「吹雪はどうして敵がそう動くと思う?」

作戦会議において長門にそう問われ、吹雪はしばし考えた後に答えた。

「深海棲艦の立場で、司令官の考え方をしました」

つまり目的は敵勢力の撃滅でなく、後方の拠点攻撃に有る。
我らが提督が深海棲艦の立場であるならば、決戦を迂回して後方を攻撃するということだ。

戦艦たちはその打撃力のために全力で敵を叩く事こそが事態の解決に有ると考えてしまう。
だが吹雪の指摘するとおりだろう。
作戦会議に出席した艦娘たちは、提督が吹雪を自らの後継者と目して傍においていたことを再度感心を覚えた。

戦場の選択権は深海棲艦側にある。
だからこそ、動向を見極める必要があった。

進行中に前衛艦隊の攻撃を受け、深海棲艦はそのまま固まっているのか、艦隊戦を避けて本土攻撃を目指すのか。
前衛艦隊の目的は邀撃とともに威力偵察の意味も有った。

鎮守府から前衛艦隊が出撃して約6時間。
硫黄島からの敵艦隊発見の報から一晩が過ぎ、まもなく夜明けを迎えつつあった。
伊豆諸島八丈島の南々東、約100キロの場所で球磨から発艦した零式水上偵察機は敵艦隊を捉えた。

敵艦隊は報告通り150隻を超える大艦隊。
対して前衛艦隊は支援艦隊含めて12隻。

昇りかけた太陽の光に艦娘たちの顔が浮かび上がる。
球磨は総旗艦として全員の顔を見渡す。

「これより球磨たち前衛艦隊は敵艦隊への攻撃を仕掛けるクマ」

球磨の言葉に皆一様に頷く。

「提督は皆んな、鎮守府でまた会おうと言ったクマ。この戦闘は決死の覚悟が必要クマ。でも最後まで生き伸びることを忘れないで欲しいクマ」

それぞれの艦娘から了解の声が上がる。

「それじゃあ、行くクマ! 全艦両舷全速、吶喊するクマ!」

本土防衛作戦前哨戦、八丈島沖海戦が幕を開けた。
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