ウィークリーミッドガルドニュースネットワーク編集部

ここはROの架空ニュースサイト【Midgard News Network】にある、WeeklyMNN編集部・・・という設定です。元はラジヲ分室でしたけどね。
『空が青いな』

テオこと、テオバルトは地面に四肢を放り出し、荒い息を整えながらそう思った。

いつもの年なら一面は青々とした小麦畑が広がっているはずだった。
テオは父や母、祖父、祖母、妹たちと今年の実りを期待しながら雑草とりなどの小麦の世話に追われていたはずだ。
しかし今年の畑はただ荒れるにまかせ、雑草に覆われていた。

それが否応無しにテオたちの状況を認識させる。テオや家族、村の仲間たちが生活を営んだ場所はもう無いのだと。
かつて開拓村として拓かれたリーネベルクにいまあるのは、プロンテラ軍の駐留する軍事砦だ。

昨年の秋、オークたちの攻撃で開拓村であったリーネベルクは陥落した。
当時村に駐留していた聖堂騎士団の派遣部隊の足止めにより、幸いにも村人は人的被害を受けることなく、難民として王都プロンテラにはいった。

だがプロンテラでの暮らしは厳しいものだった。
オークの勢力拡大の影響はリーネベルクだけの問題ではなく、プロンテラには同様に被害を受けた開拓民が難民となって大量に流入していたのである。

これに対して王国府による支援は皆無に等しかった。
プロンテラ大聖堂もまた支援は行われず、一部の聖職者などが有志で難民の支援に当たったが、せいぜい生きて行くのがやっとと言うレベルでしかない。

そんなとき、オーク勢力拡大に対してのプロンテラ軍の兵士拡充の知らせを知った。

プロンテラ軍の兵士になれば、衣食住は確保できる。
給料で家族の暮らしを楽にすることも出来る。

誰がいったのかは知らないが、テオはその話に乗った。
同世代の少年・少女らとともにプロンテラ軍の門を叩いたのである。

試験は簡単な面接だけだった。
試験官はテオたちに言った。

「君たちは故郷を取り戻すために志願したのだな」
テオと仲間たちはそれに頷き、プロンテラ軍の兵士となった。

一番は食い扶持のためだが、どこかで試験官の言うことも正しいと感じていた。
故郷を取り戻したかった。

いや違う。
取り戻したかったのは、厳しくもあったが、穏やかな故郷での日々だ。
兵士になれば、いつの日か故郷を取り戻し、家族とまた農夫としての生活が出来るのだと信じていた。

兵士となり派遣された先は、プロンテラ軍の反抗作戦により回復した、故郷リーネベルクだった。
しかし、数ヶ月ぶりに戻った故郷の姿は変わり果てていた。
軍事砦としてのリーネベルクのなかに、かつての開拓村の面影が見え隠れすることに涙した。

そして何より、この地に派遣されて辛いことは、この砦の誰もが彼らを役立たずとしか見ていないことだ。
農夫上がりの少年少女を、この砦の兵士や傭兵たちは同胞としては見なかったのである。
むかしむかし。

わしのおうこくには、ふたりのおうじがいました。

あには おさないころからたんんれんをかさね、ぶゆうにすぐれていました。
おうとうとは おさないころからあらゆるしょもつをどくはし、すぐれたちせいのもちぬしでした。

ちちであるおうさまがいたころ、ふたりはおたがいのすごれたちからをはっきして、おうこくをさかえさせました。

しかしちちであるおうさまは、あるときとつぜんなくなってしまいました。
おうさまはきょうだいのどちらをすぎのおうさまにするかさえもきめずに。

あるかしんはいいました。
「このくにはぶじんのくにである。だからあにのおうじこそ、つぎのおうさまにふさわしい」

またあるかしんはいいました。
「せいせんのころならいざしらず、まもののきょういもとおいむかしのこととなった。みらいのおうこくのはってんのためには、おとうとのおうじこそ、つぎのおうさまにふさわしい」

かつておうさまのもとでひとつにまとまっていたかしんたちは、あにのおうじをたてるいっぱと、おとうとのおうじをたてるいっぱとにわかれ、だんだんとなかがわるくなっていきました。

そのようすにだれよりもこころをいためていたのは、とうのおうじたちでした。
「このままでは、せんそうになる」

あるひ、あにのおうじはたんしんで、おとうとのおうじをたずねました。
おとうとのおうじをたてるかしんたちは、そのことをけいかいしましたが、おとうとのおうじはひとをはらってあにのおうじとたいめんしました。

あにのおうじはいいました。
「つぎのおうにはおまえがなれ。おまえをささえるかしんたちがいうとおり、まもののきょういはとおくなり、このくにはあんていしている。これからおうこくをさかえさせていくのにひつようなのは、おまえのもつちせいなのだ」

おうとうとのおうじはいいました。
「それがあにうえのきぼうならば、わたしはそれにしたがいましょう。しかしあにうえをたてるかしんたちは、それでなっとくしましょうか」

あにのおうじはわらいました。
「おうはおうじがならねばならない。ならばおれはおうじのざをすてよう」

そうしてあにのおうじはおうじではなくなり、つぎのおうとなったおとうとのおうじのかしんのひとりとなったのでした。

つぎのおうにはおとうとのおうじがなりましたが、こんらんでわしのおうこくはつかれていました。
これをチャンスとおもったりんごくはぐんたいでせめこんできました。

このぐんたいにたちむかったのは、かつておうじだったあにでした。
あにはゆうもうかかんにたたかい、りんごくのぐんたいをおいかえすことにせいこうしたのでした。

おうとなったおとうとのおうじは、このあににかんしゃして、いっきのはたをおくりました。
そのはたにはきんしでいろどられた、おうごんのししのすがたがえがかれていました。

このせかいにししはすでにいませんでしたが、ししはりくのおうじゃであるといいつたえられていました。
そらのおうじゃのしるしであるわしをひきついだおとうとのおうじから、そのためにおうじをすてたあにへのせいいっぱいのかんしゃのしるしでした。

あにはこのはからいにかんしゃし、いらいたたかいにおもむくときは、つねにこのはたをかかげるようになりました。
そのいふうどうどうとしたさまに、こくみんたちはいつしかこのあにを『おうごんのししのひと』とよばれるようになり、そのかぞくは『おうごんのししのいえのひと』とよばれるようになりました。

いらいひゃくねんいじょうのときがながれました。

『おうごんのししのいえのひと』たちは、『おうごんのししのひと』がなくなったのちに、ふたたびおうけのいちいんとなりましたが、そのいえのひとびとはみなぶじんとして、『おうごんのししのひと』のこころざしをひきつぎ、おうこくをまもることをしごととしました。

そしてそれは、げんざいでもつづいているのです。



 プロンテラから離れたプロンテラ軍対オーク戦線の最前線たるリーネベルク砦は、王都より商人がもたらした話題で持ちきりだった。
 御前会議で聖堂騎士団総長ミケル・レカント・ニキータが提案したオーク族集落への武力侵攻が圧倒的な支持により可決され、王都では大規模な軍編成が行われているのだという。
 西部から侵攻する第一軍をプロンテラ騎士団長ヘルマン=フォン=エベソスが率い、東部から侵攻する第二軍には聖堂騎士団総長ミケル。
 そして寡兵ながら南方から侵攻する第三軍の指揮官には、王家筋の人物が任命されたのだという。
 エリーゼ=ゴルドレーヴェン。
 『金獅子』を家名にもつ若干19歳の騎士である。

(注意:この文章はティーフのヒトこと、綾瀬涼矢から提供してもらいました)
「あの、小隊長。私からもよろしいですか?」

今度は三人で唯一の女性であるハンナが声をかけてきた。

「なんだろうか?」

「小隊長がお連れになった司祭殿をしばらくお借りできないしょうか」

「どゆこと?」

「ハンナは隊の衛生要員です」

フォローするようにランドルフがそう告げた。

衛生要員。つまるところ衛生兵は医療担当の兵科である。負傷した兵士の治療などに当たるほか、食物や水の衛生管理なども担当する。
スキルを要することから補充がし難く、プロンテラ軍においても絶対数が足りない貴重な要員である。
正直なところこの部隊にはネコに小判どころか、金の延べ棒だ。

「言ってはなんだが、よくもこんな隊に配属されたな」

私の言葉にハンナは苦笑する。

でも考えて見れば、大部分を占める兵士は子供たちではあるが、核となる要員については贅沢な構成だ。
歴戦の副官、調達の達人、そして衛生要員か。誰だ。こんな人的無駄遣いしたヤツは。
まあもっともそれが今回は助けになる。

「わかった。ミオはハンナに預ける。他に見込みのありそうなのがいれば言ってくれ。衛生担当は多いに越したことはない」

「ありがとうございます」

「他に何か提案やらはあるか?」

「まあ、あとはグンソウと小隊長次第ですよ」

どこかにやけた表情のウォルターが言う。

「では明日からよろしく頼む」

「ヤー」

三人が敬礼で返答した。

「あー・・・ひとつ、聞いて良いかな?」

「ハッ。何でしょうか」

「何で、ランドルフはグンソウとか呼ばれてるわけ?」

私の問いにランドルフは困ったような表情を浮かべ、その様子に他のふたりはクスクスと笑い出す。

結局本人からその理由を教えてもらったものの、ランドルフは終始恥ずかしそうであった。まあそうだよなあ。自分が周囲に敬意を持たれてるなんて、自分から説明できんわな。
でもまあ、彼がそのあだ名に値する人物であることは、私も内心認めていた。だから私もこれから彼を『グンソウ』と呼ぶことにしよう。